Published at 2021 / 10 / 30
11月1日は「本格焼酎の日」
本格焼酎の日の起源
実は明日11月1日は「本格焼酎の日」です。
そしてその日は焼酎だけではなく、「泡盛の日」でもあります。
1987年(昭和62年)日本造組合中央会によって毎年11月1日は「本格焼酎と泡盛の日」と定められたのが始まりです。
本格焼酎の内、一番の製造量を占める芋焼酎は毎年8月~9月頃に仕込みが始まり、「本格焼酎の日」の11月1日前後にその年の新酒が出荷されます。そして毎年その新酒の時期になると、日頃お世話になっている消費者や地域の方々に感謝の気持ちを伝えるべく、各地の酒蔵では新酒祭りなど様々な催しが行われています。今年は新型コロナウイルスの影響を受けオンラインでイベントを行う酒蔵も多いようです。オンラインといえど、従来のように無料でお酒が提供されていたり、バーチャル酒蔵見学や料理とのペアリング講座があったりなど、おうちに居ながらでも楽しめるような内容となっているところがたくさんありますので是非参加してみてください。
「本格焼酎」=「芋焼酎」?
このように「本格焼酎の日」11月1日近辺でイベントを探してみると、“芋焼酎”の新酒祭りが多くヒットします。
では「本格焼酎」=「芋焼酎」なのか?といわれると、そうではありません。
本格焼酎は酒税法で厳密に定義されており、内容は以下の通りです。
【本格焼酎】(ほんかくしょうちゅう)
単式蒸留焼酎のうち、次に掲げるアルコール含有物を蒸留したものをいいます。
1.イ 穀類又はいも類、これらのこうじ及び水を原料として発酵させたもの
2.ロ 穀類のこうじ及び水を原料として発酵させたもの
3.ハ 清酒かす及び水を原料として発酵させたもの、清酒かす、米、米こうじ及び水を原料として発酵させたもの又は清酒かす
4.ニ 砂糖(酒税法施行令第4条第2項に掲げるものに限る)、米こうじ及び水を原料として発酵させたもの
5.ホ 穀類又はいも類、これらのこうじ、水及び国税庁長官の指定する物品を原料として発酵させたもの(その原料中国税庁長官の指定する物品の重量の合計が穀類及びいも類及びこれらのこうじの重量を超えないものに限る。)
国税庁長官の指定する物品
あしたば、あずき、あまちゃづる、アロエ、ウーロン茶、梅の種、えのきたけ、おたねにんじん、かぼちゃ、牛乳、ぎんなん、くず粉、くまざさ、くり、グリーンピース、こならの実、ごま、こんぶ、サフラン、サボテン、しいたけ、しそ、大根、脱脂粉乳、たまねぎ、つのまた、つるつる、とちのきの実、トマト、なつめやしの実、にんじん、ねぎ、のり、ピーマン、ひしの実、ひまわりの種、ふきのとう、べにばな、ホエイパウダー、ほていあおい、またたび、抹茶、まてばしいの実、ゆりね、よもぎ、落花生、緑茶、れんこん、わかめ
参考:国税庁ホームページ/焼酎に関するもの/【本格焼酎】
焼酎に関するもの|国税庁 (nta.go.jp)
つまり「本格焼酎」は単式蒸留という蒸留法を用いたもので、芋に限らず米、麦、その他指定された約50種類に該当する原料を使用した焼酎のことを指します。
なので芋だけでなく、麦焼酎や米焼酎も本格焼酎に該当するものがあるのです。
ではなぜ「本格焼酎の日」は芋焼酎の新酒出荷時期に該当するのでしょうか。この理由については諸説存在しますが、今回は「本格焼酎の日」の提言者や制定された時期の時代背景を元に解説していきたいと思います。
元々この「本格焼酎」は「乙類焼酎 おつるいしょうしゅう」とも呼ばれています。焼酎は蒸留法によって「乙類焼酎」と「甲類焼酎」に分けられるのですが、この“乙”という言葉が“甲”と比べて劣っているという意味にとらえかねないため、「乙類」に代わる「本格焼酎」という名称が1957年に江夏順吉(えなつじゅんきち)という方によって提唱されました。この江夏順吉は芋焼酎「黒霧島」で有名な霧島酒造の2代目社長です。なので明言はされていないものの、提言者の影響を受けて「本格焼酎の日」は芋焼酎の新酒出荷の時期になったのかもしれません。
ワインと焼酎の意外な共通点
またお酒好きの方で“11月とお酒”といえばとある時期がピンとくるかもしれません。そう、「ボジョレーヌーボーの解禁日」です。毎年11月の第3木曜日に解禁されるボジョレーヌーボーは、時差の関係で日本が世界で一番早く飲むことができる国であるとして人気を博しました。そしてその人気が爆発したのがバブル期であった1980年代後半、つまり「本格焼酎の日」が制定された時期に該当します。当時はボジョレーヌーボーの影響を受けて“新酒は美味しい、価値がある”と認識していた人も多く、それに追随して乙類焼酎のイメージをアップさせるために、芋焼酎の新酒が世に出るのと同じ11月に「本格焼酎の日」が定められたともいわれています。
また同じく日本に赤ワインブームをもたらしたきっかけとしては、“赤ワインが健康にいいのではないか”という、いわゆる「フレンチパラドックス」も影響していました。そして1988年には当時宮崎医科大学(現, 倉敷芸術科学大学)の須見教授によって「焼酎と血栓との関係」という、焼酎の健康的効能についての医学研究も発表されました。その研究が世間的に話題になったのはそれから十数年後の第3次焼酎ブームの時でしたが、そのように「本格焼酎の日」が制定された1980年代後半は乙類焼酎のイメージ向上のために、焼酎に関する様々な分野で努力がなされていた歴史があるのです。
お酒にまつわる記念日は他にもいろいろ
「本格焼酎の日」、「泡盛の日」、「黒糖焼酎の日」以外にも、7月1日の「壱岐焼酎」、8月8日の「球磨焼酎の日」、10月1日の「日本酒の日」など、お酒にまつわる記念日が様々あります。お酒の世界の面白さ、知見を広げたい方は是非イベントに参加したり、飲んだことのない銘柄にチャレンジしてみる機会としてお酒の日を楽しんでみて下さい。