この原酒が蒸溜された1995年、ウイスキー業界はかつてない冬の時代、その傍ら新潟の「淡麗辛口」日本酒が一世を風靡し、焼酎はまさに革命前夜の状況にありました。そして2000年に入り第三次焼酎ブームが訪れ、2003年にはついに日本酒の消費量を上回り、歴史的大ヒットを見せました。わたくし橋本は直接第三次焼酎ブームを経験しているわけではないですが、その時の盛り上がりは凄まじく、どこのメーカーも商品が常に足りない状況だったと聞いています。 この頃、焼酎市場は前例のないブームに沸き立ち、あらゆる商品が売れるという状況が生まれました。このような時代において尚、蒸溜所のゑびす酒造では、一貫して厳しい品質基準を守り、3年以上熟成させた原酒のみを商品化するという方針を頑なに堅持していました。そのため、市場の需要が急速に高まったにもかかわらず、ゑびす酒造の哲学により原酒は世に出ることなく28年の時を経て今日まで熟成されていたことは、まさに奇跡と言えるでしょう。 そんな28年の熟成により、アルコール度数は37%へと落ち着き、それは偶然にもヨーロッパの蒸留酒といった食後酒としての可能性を秘めているように感じます。28年という歳月が醸す繊細な深みとまろやかさを、ぜひご堪能ください。